安全はトラック運送業界にとって最大の課題です。安全で安心な輸送はライフラインたる物流の安定には欠かせません。国は『事業用自動車総合安全プラン』という大目標を掲げ、業界が一丸となって飲酒運転の根絶と交通事故撲滅を目指して様々な取り組みを行っています。ここでは、安全や環境に関する様々な動向について、分かりやすくお伝えします。
トラックドライバーは毎日の乗務前後に健康状態などの確認のため「点呼」を実施するのですが、その際にアルコール検知器と言われる呼気中のアルコールの含有量を測定する機械を使って検査しなければなりません(2011年に義務化)。
この検査で少しでもアルコールが検知されると絶対にトラック運転することができないこととなっており、検査をするときは必ず運行管理者等がその結果を確認することとなっています。
また、1泊2日等の宿泊が伴う運行についても、携帯型のアルコール検知器を持参し出発の前には必ず検査をし、その結果を運行管理者へ報告することとなっており、飲酒運転をしないための厳格なルールが定められています。
さらに「呼気吹き込み式アルコール・インターロック」といって、運転前に必ず呼気(吐く息)をチェックして記録し、もしアルコールを検知したら車が動かないという装置も開発され、次第に導入が進んでいます。
トラックの後ろを見ると、このようなマークを貼っているのを見かけたことがある人もいるかと思います。
これは「Gマーク」といって交通安全対策に対して、一定の基準をクリアした事業所がつけることができる安全運転をするトラックの証なのです。
このマークは、全日本トラック協会が認定する貨物自動車運送事業安全性評価事業の申請をし、38項目の実地調査と11項目の書類審査、そして直近の事故や違反状況の確認がされ、基準の点数をクリアすることで初めてトラックにつけることができます。
認定される期間が定められているため、Gマークを付け続けるためには常に交通安全に積極的に取り組む必要があります。
愛知県内でGマークの認定を受けているのは1802事業所が認定を受けており、これは県内全体の37.6%になります。(2020年12月14日現在)
是非トラックを見かけたときはGマークが付いているか見てみてください。
確かにトラックが排出する排気ガスには大気汚染物質である一酸化炭素(NO)や二酸化炭素(NO2)(総称して(NOX(ノックス))が含まれています。
しかし、このNOXによる環境への影響について、環境省により公表された大気汚染状況の環境基準達成率の測定結果は、近年高い水準で推移しています。
これは、トラック運送事業者が、環境対策を積極的に進めてきた成果といえます。
その対策の一つとして行われているのが、天然ガス自動車(NGV)の普及促進です。
NGVとはトラックの燃料である石油に替わる燃料として天然ガスを使用することで自動車に比べて、CO2(二酸化炭素)の排出量を10~20%程度削減することができます。
NGVは普通のトラックよりも値段が高いことや、燃料を補給するためのスタンドが少ないこと、軽油を燃料とする車両と比較するとパワーが少ない傾向にあることなど、まだまだ多くの課題があります。全日本トラック協会ではこれらの問題を解消するために、トラック運送分野における天然ガスの本格的利用促進についての明確な方針の樹立などを政府に対して要望しています。
また、その他の環境への取り組みとして挙げられるのがEMS(エコドライブマネジメントシステム)の導入です。
EMSとは、「アイドリングストップ」や「低燃費で安全を考えた運転」などのエコドライブについての評価や指導を一体的に行う車載機器のことです。車載器から、ドライバーの運転データ(車速・走行距離・運行時間など)を取得し、営業所側の分析ソフトで読み込んだデータをエコドライブの観点から分析し、運行診断結果を出力し、日々の運行に対して指導を行うことで環境に優しい運転をすることができます。
トラック協会では、より環境に優しい車両への代替を促進するため、独自の融資制度を設け、更に先進環境対応車については、国や地方自治体と協調した助成制度を設けて、更なる大気汚染の改善に取り組んでいます。
もちろんトラックにもバックモニターやドライブレコーダのような、安全運転を支援するハイテク機器が普及しています。
バックモニターは多くのトラックが取り付けており、特にバンボディ(箱車)といわれる箱型の荷台があるトラックについては、バックミラーでは後方を確認することができないため、バックモニターを取り付けることで死角となる後方の視野を確認することができます。
また、その他にも側方視野確認支援装置といって、車体の側面を写すカメラが取り付けられている車両もあります。これは大型トラックの事故に多い左折や車線変更をするときの巻き込みを防止するもので、運転手の死角になる車体の左側の視野を確認することで事故防止へ役立てています。
ドライブレコーダについては、近年あおり運転が問題となり、法改正により罰則が厳しくなったことで重要視されるようになりましたが、トラック業界においては事故や急加速・急減速などの異常な動きが生じた際に、走行中の映像を記録し、この記録を活用することで事故防止に役立てることを目的に取付の普及促進が行われています。
全日本トラック協会では、録画した画像を社内教育に活用できるようにトラックに特化した「ドライブレコーダ導入の手引き」と「ドライブレコーダ活用マニュアル」を作成し、普及促進に努めています。